家族の写真や動画を撮影したデータ、育児中のご家庭はお子さんの画像や動画も日に日に増えていっている事かと思いますが、そういった貴重なデータをどうやって保管していますか?バックアップを取っていますか?
デジタルデータは簡単に閲覧も出来ますし、部屋のスペースもとりませんし便利なものですが、その一方できちんとバックアップを取らないと一瞬で失うリスクも含んでいます。ずるずると後回しにせず、今すぐバックアップを考えましょう。
僕自身、HDD故障によるデータ損失の苦い経験をもとに、今では子供や家族のデータをバックアップしながら親族で共有しています。
また、僕は映像系の仕事をしている関係で、のべ100TBにも及ぶデータを扱い、10年間で11,000本、この5年間だけでも約9,000本のハードディスク(HDD)を扱ってきました。その経験をもとにHDDの扱いに関しても情報を共有できればと思います。
目次
デジタルデータのバックアップとは「冗長化」のこと
「冗長化」と聞いてもピンときませんよね。僕もピンと来ていません。
冗長化という言葉の意味を覚える必要はありませんが、簡単に言いますと、「同じ状態を2つ以上構築する事」です。デジタルデータのバックアップの際にはこの「同じ状態を2つ以上構築する事」を意識することが大切です。
データを2つのHDDに入れておけば、1つのHDDが壊れてももう1つから救い出せます。3つに入れておけば、2つが壊れてしまったとしても救えます。
この様に、同じ状態を多く作れば作るほどデータを失うリスクを下げることができます。
子供や家族の写真や動画をバックアップする方法
ではどうやってお子さんやご家族の写真や動画をバックアップすればいいでしょうか。具体的に見ていきましょう。
撮影デバイスとパソコン(PC)に保存
スマホやタブレット、あるいはデジカメやデジタルビデオカメラなどの撮影デバイス(や保存用SDカードなど)にデータが保存されます。そういったデータはついついそのままにしがちですが、それらのデバイスが壊れたらデータが救い出せなくなるリスクがあります。
まずはそれらの撮影データをPCへコピーすることで、データを冗長化させバックアップできます。
撮影デバイスとパソコン(PC)に保存 メリット
作業がシンプルです。ほとんどの場合、この作業を経ないとデータのバックアップは出来ないでしょう。
撮影デバイスとパソコン(PC)に保存 デメリット
どのデータをPCにコピーをしてあるかを管理しづらい面があります。管理ソフトを利用したり、撮影日で管理する、あるいはSDカードを撮影日によって変えるなどで対応しましょう。
注意ポイント
撮影デバイスからPCへコピーした後、撮影デバイスからデータを削除した場合、データはPCにしかない事になります。つまり「同じ状態を2つ以上構築する事」が実現できておらず、データ損失のリスクは軽減できていませんのでご注意ください。
撮影デバイスの容量はすぐにいっぱいになりがちです。PCにのみデータがある状態を避け、以降でご紹介する方法で冗長化を図りましょう。
PCと外付けHDDに保存
PCの内蔵HDDやSSDに撮影データを保存し、それを丸々外付けのHDDにも複製保存する方法です。これでパソコンが壊れても、外付けHDDにデータが残りますし、外付けHDDが壊れても、PCのデータを利用することができます。
PCと外付けHDDに保存 メリット
一番気軽な冗長化の方法でしょう。FreeFileSyncの様な自動同期ソフトを利用すれば、定期的に自動で保存する事も可能です。
PCと外付けHDDに保存 デメリット
PCのデータを更新してから、外付けHDDも更新するまでの時間差がリスクになります。PCのデータを更新してからいかに素早く外付けHDDも更新するかがカギと言えます。
また、Windows10やMACなど、OSによるデータのコピーは100%確実なものではありません(いわゆるドラッグ&ドロップや、コピー&ペーストはOS依存のコピー方法です)。
複製を増やすとその分コピーエラーによるデータ破損のリスクも増えます。
FreeFileSyncやFast Copyの様な自動同期ソフトやハッシュチェック機能を備えたソフトを利用して、確実にバックアップを取りましょう。
◆外付けHDD 人気No.1
外付けHDD2台に保存
PCへの保存を続けると、PCの内蔵HDDの容量を圧迫し始めます。そういった場合はPCと外付けHDD1台への冗長化ではなく、外付けHDD2台で冗長化する(同じ状態を構築する)方が現実的でしょう。
1台ずつそれぞれPCに繋いで利用するのでも大丈夫ですが、2台収納できるHDDケースを利用して運用する方が便利です。
外付けHDD2台に保存 メリット
RAID運用
2台収納できるHDDケースを利用して、2台のHDDをRAID管理することができます。
RAID1によるミラーリングで冗長化することで、2台のHDDを1台のHDDの様に扱う事もできますし、2台のHDDの同期をとる際に操作ミスによってデータが消えるというリスクも減らせます。複製の際のコピーエラーのリスクも減らせます。
RAID1って?
複数(ここでは2台)のHDDを1台のHDDの様に扱う技術で、操作上1台のHDDにコピーしている様に作業するだけで、裏では2台のHDDに同じデータを書き込んで(冗長化して)くれる機能をミラーリングといい、RAID1とも呼ばれます。
RAID1では、仮に1台のHDDが故障しても、もう1台のHDDのデータを利用することが可能なんです。
シングル×2台運用
RAID運用ではなく、シングルのHDD2台として運用する事も可能です。HDD1台の時と同じ運用を2台分にするだけですので、運用もシンプルですし、RAIDトラブルのリスクもありません。
外付けHDD2台に保存 デメリット
RAID運用
RAIDによる運用をした場合、HDDが故障した際などの復旧に最低限の知識が必要になりますし、時間がかかる場合もあります。復旧時の操作ミスでデータが全て消失するリスクもあります。
シングル×2台運用
シングルのHDD2台で運用した場合は復旧時の諸問題からは解放されますが、2台で確実に冗長化させる(同期をとる)作業が求められます。しかしこの問題も、FreeFileSyncなどのソフトを利用することでかなり単純な作業にできます。
◆外付け2台用HDD
2台のHDDが予め組み込まれた外付けHDDは市販されていませんので、2台用のHDDケースとHDDをそれぞれ購入して組み込みましょう。
2台用HDDケース
HDDの組み込みが比較的容易な機種をご紹介します。
■センチュリー 裸族のテラスハウス CRTS35EU3RS6G
・RAID/シングル どちらでの利用も可能
・14TB+14TBで最大28TBを搭載可能!(2019年7月現在)
・ファンによる冷却機能
■RATOC RS-EC32-U3RX
・RAID/シングル どちらでの利用も可能
・ファンによる冷却機能
・ディスク丸ごと暗号化処理も可能
組み込み用HDD
上記のケースの推奨スペックHDDに該当するHDDをご紹介します。
★RAIDを検討している場合は、2台とも同じ容量のHDDを購入してください
■Seagate製 ST8000DM004【8TB】
2020年8月現在、容量あたりのコストパフォーマンスNo.1です!
■Western Digital製 WD60EZAZ 【6TB】
2020年8月現在、人気No.1商品!
子供の写真なども2台のHDDにそれぞれコピー(同期)しています。HDDの故障以外でもRAID崩壊は起こりえますので、あくまで個人的な気持ちとして、バックアップ作業を慎重に行う事に集中し、将来のRAID復旧とか今は考えたくない!という思いでそうしています(笑)。
HDDって壊れやすくないの?
僕の経験上、HDDは消耗品と考えた方がいいです。また、物理的に衝撃を与えた場合以外では、熱による冷却が不十分な場合に故障が多い様に感じます。
しかし、業務上僕は今まで11,000本のHDDを何十回とリライトしたり、輸送したりして運用していますが、故障率はわずか2.2%程度ですし、メーカーや製造ロットによる差はそれほど大きくありません。
ですので、HDDにあまりこだわるよりは、「明日にも壊れるかもしれない」という気持ちでデータを複数の保存先に保存する方が現実的でありベストな方法と言えるでしょう。
PCとクラウドストレージサービスに保存
ご自身のPCにデータを保存しつつ、Google DriveやAmazon Cloud Drive、Dropboxなどのクラウド型のストレージサービスを利用し、そこに写真や動画をアップロードして保存する方法です。
PCとクラウドストレージサービスに保存 メリット
PCへ保存したデータをクラウドストレージへアップロードするだけで冗長化が可能となります。PC内の特定のディレクトリ(フォルダ)を自動で同期アップロードしてくれるサービスも多く、PCへデータをコピーすれば勝手に冗長化されている、という運用も可能です。
また、クラウドストレージ上にデータがありますので、どの場所からでも、どのデバイスからでもそのストレージにアクセス出来ればデータを利用できます。
ポイント
主なクラウドストレージサービスは、データを預かるストレージ自体を冗長化していますので、ストレージからデータが消失するリスクは限りなくゼロに近いです(ゼロではありません)。
ですので、ご自身のPCとクラウドストレージとさらにそのストレージ自体の冗長化で、3重の冗長化をしているとも考えられます。
余談
クラウドストレージサービスによっては、データを各地域に分散保存してくれるサービスもあります。
そういったサービスの場合、たとえば東京のデータ保管ストレージが天災等で破損しても、別の地域のデータが残るという地域的な分散冗長化を狙う効果もあります。
PCとクラウドストレージサービスに保存 デメリット
クラウドストレージサービスへの接続にはインターネット回線が不可欠です。またその回線の速度によっては、データをやり取りするのに時間がかかる可能性もありますし、インターネット回線が切断されるとその間は全くデータを利用できなくなるリスクを含んでいます。
また、各ストレージサービスはセキュリティへの対策を施していますが、悪意のある第三者によってデータを盗まれるリスクはゼロではありません。
さらに、各ストレージサービスは無料で使用できる容量は多くなく、大容量を使用する場合は有料となりますので、データの保管にコストが発生してしまいます。
主な個人向けストレージサービスの無料プラン
- Dropbox:2GBまで無料
- One Drive:5GBまで無料
- iCloud Drive:5GBまで無料
- Amazon Cloud Drive:5GBまで無料
- Google Drive:15GBまで無料
Amazon Photos
Amazonプライム会員はAmazon Photosを利用できます。Amazon Photosとは写真を容量無制限でクラウド保存できるサービスです(動画は5GBまで)。
ただし、プライム会員を解約すると保存データも消去されてしまいますので、冗長先として保存するのではなく、家族や親族で共有するための利用に適しています。
じいじとばあばに娘の写真を共有するために利用していますが、とても便利です。
◆関連記事
Amazon Photos他Amazonプライム会員について説明しています。
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子育て世帯にはAmazonプライムが救世主となる!?
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PCと自宅内NASに保存
PCへの保存と共に、自宅のネットワーク内にNAS(ネットワーク対応HDD)を用意し、そちらに保存していく方法です。
PCと自宅内NASに保存 メリット
自宅内のNASに写真や動画を保存することで、自分だけでなく家族が撮影したデータのアップロード先としても利用できます。
家族全体でのデータ管理がしやすく、それらのデータも家族全体で共有しやすくなります。
パソコンだけでなく、スマホやタブレットなどからアクセスできるのも魅力でしょう。
一般的に、オンラインのクラウドストレージサービスへデータを保存するよりも、悪意を持った第三者からデータを狙われるリスクも下がります。
(ただし適切なセキュリティを施した場合です。)
さらに、NAS内のHDDをRAID等で冗長化させることで、PCとNASとで3重の冗長化を施すことも可能になります。
PCと自宅内NASに保存 デメリット
NASを構築・運用するには相応の知識が必要となります。
また、NAS用の機器は一般的には外付けHDDよりも高額になりますので、お子さんやご家族の写真や動画以外にもNAS運用のメリットを見いだせない場合は、割高感が否めません。
◆はじめてのNAS導入におすすめ
さらにテレビ録画したデータもNASに入れておくことで、いつでも録画番組を鑑賞できるようにもして運用していました。
最近ではテレビ番組よりも動画配信サービスの視聴が増えた事、NASのHDD容量では足りなくなってきた事、Amazon Photosによる共有が便利な事 などによりNAS運用は停止しています。
家族や子供の動画・画像のバックアップは今すぐにやる事! まとめ
どんなデータにも言えることではありますが、家族や子供の動画や写真(画像)データのバックアップには以下の点に注意して管理しましょう。
必ず同じデータを複数の保存先に保存する事
保存容量は徐々に増えていくので、容量を追加しやすい保存先を選ぶ
自分にとって一番楽でストレスの少ない保存方法を選ぶ
保存(コピー)する際には同期ソフトや、ハッシュ照合機能付きソフトを使う
自分だけでなく、家族のデータも保存しやすく、共有しやすい方法を選ぶ
冗長化としてよくある間違いに、PCのCドライブとDドライブに保存しているケースがありますが、CドライブとDドライブが同じストレージ(HDDやSSD)の場合、全く意味がないです。
そのストレージドライブが故障したらCドライブのデータもDドライブのデータも飛んでしまうからです。
このページで紹介している方法で保存する、あるいはそれらをいくつか複合的に利用してバックアップをしましょう。
明日やるのではなく、今やることがバックアップには大切です。