昨今の新型コロナウイルスにより、映画館で映画を見る人が大幅に減りました。その分、動画配信サービスを利用して家で映画をみる人が増えました。日本ではAmazon Prime Videoへの加入者が一番多かったそうです。
映画館で映画を観るメリットとデメリット、動画配信サービスで映画を観るメリットとデメリットを考えてみます。

目次
映画館で映画を観るメリット
映画館で映画を観る。動画配信サービで映画を観る。どちらも一長一短あります。映画館で鑑賞した方がメリットが多そうなことを整理してみます。
映像・音声クオリティはやはり映画館が優位
現在、映画館で上映される映画の大半はデジタルデータによる上映です。一部ブルーレイによる上映もありますが、多くはデジタルシネマパッケージ(DCP)と呼ばれる、2005年にハリウッドの7大スタジオが提唱した規格に準拠した仕様で制作されています。
また、最近ではDolby VisionやDolby Atmosなどの新しい規格のDCPも登場し、クオリティは進化しつつあります。
DCPの仕様
【映像】
解像度:2Kまたは4K
圧縮コーデック:JPEG2000
ビットレート:最大250Mbps
カラースペース:DCI-P3(Dolby VisionはRec2020も可)
ビット震度:12bit
【音声】
圧縮:なし
チャンネル:5.1ch/7.1ch/イマーシブオーディオ(Dolby Atmos/DTS:X)
動画配信サービスの仕様
【映像】
解像度:2Kまたは4K
圧縮コーデック:AVCメイン(NETFLIX等ではHEVCも)
ビットレート:最大30Mbps程度
カラースペース:Rec.709など(NetflixなどはRec2020も採用)
ビット震度:8bit~10bit
【音声】
圧縮:あり
チャンネル:5.1ch/7.1ch/イマーシブオーディオ(Dolby Atmos/DTS:X)
技術的な詳細は省きますが、意外とクオリティの差があることが分かります。
世間的には「解像度」が画質の話題の中心になりがちですが、映像の品質を形成するのは解像度だけではありません。映画館用のDCPというのは解像度以外にもきちんと注力して制作しているんですね。
映画製作のほとんどは映画館での視聴環境を想定して制作されていますし、やはり映画を映画館で鑑賞するという事自体にまだまだ価値がありそうです。
DCPの課題
映画館用のDCPにも課題はあります。
2005年に規格が制定されてから現在の2020年になるまで、動画配信サービスにある様な革新的な技術更新がなされていません。
Dolby Cinemaなど新しい規格も取り入れていますが、様々な要素で動画配信サービスの新しい技術に追い越されかけているのも事実です。

映画館先行公開が主流
映画は映画館で公開され、大半の映画館上映が終わってようやく動画配信サービスやブルーレイ販売にシフトする。
映画興行が始まって以来ずっとこのビジネスモデルが主流でした。だからこそ人気作品の公開日には長蛇の列を作って映画館に並んだものです。
しかし、最近この流れが徐々に変わってきています。具体的に見てみましょう。
映画館公開と配信販売との間隔が短くなっている
映画館公開後に動画配信サービスやブルーレイ販売されるまでの期間が短くなってきました。映画館で上映されたほんの1~2カ月後には配信が始まる作品も少なくありません。この傾向はハリウッドに強く、日本の興行サイクルも変わりつつあります。
「映画ファンは映画館で観る」という映画館ステータスが崩れ始め、作品の熱のあついうちに動画配信サービスで集客するというビジネスモデルに変容しています。
参考
新型コロナウイルス全盛の昨今では、映画館公開と同時に、あるいは映画館公開を諦めて動画配信ビジネスを試みる映画配給会社も増えています。大手の動画配信サービスに拘らず、Vimeoなどを利用して有料販売をしている作品も多く見られます。
動画配信サービス独占作品が増えている
NETFLIXを筆頭に、最近ではAmazonプライムビデオ、U-NEXTやhuluでも独占作品の配信が増えてきました。そもそも映画館で公開しない作品です。
特にNETFLIXの場合、自社制作作品にも非常に力を入れており、オリジナル作品目当てでNETFLIXに加入するユーザーも少なくありません。
また、映画館公開予定でハリウッドスタジオが制作していた作品を、公開直前にNETFLIXで独占配信に変更したケースもあり、映画の制作スタジオですら動画配信サービスというマーケットに一目を置いていることが分かります。

映画館になかなか行かせてもらえませんでしたし、早くレンタルビデオで観たいと待ち焦がれた事をよく覚えています。
動画配信サービスで映画を観るメリット
次に動画配信サービスで映画を観る場合のメリットを考えてみます。
いつでも好きな時に鑑賞できる
テレビもタイムシフトレコーダーやタイムシフト再生が人気です。動画配信サービスもいつでもどこでも、続きからでも視聴できます。
この便利さが浸透しつつある今、決められた時間に足を運ばないといけない映画館鑑賞自体が、どこまで受け入れられるかという課題があります。
小さい子供とも一緒に鑑賞できる
映画館にも赤ちゃんや小さい子供と一緒に映画を観るイベントやサービスデーがあります。これらは非常に素晴らしい企画だと思いますし、積極的に利用したいサービスです。
しかしその頻度は決して多くなく、またその対象となった作品しか観られないという残念な点もあり、どうしても動画配信サービスに流れてしまう所以でしょう。

が、どうしても動画配信サービスが安心で甘えてしまうというのも現実ではあるんですよねぇ。
料金が安い
映画館での鑑賞料金と、テレビやスマホでの映画鑑賞の料金を比較してしまうのは、やや乱暴ではあるのですが、ただ日本の映画鑑賞料金は世界的に見ても高額で、家族でフラッと足を運びにくい価格帯でもあります。
動画配信サービスの場合、見放題の対象作品でしたら平均1,000円前後で鑑賞できます。しかも配信期間中は何度も観られます。あるいは動画配信サービスでレンタルする必要がある場合は、HD画質でも1,000円以下で鑑賞できる作品が大半です。
一方映画館ですが、各種割引はあるものの、定価で1,800円または1,900円です。あの大画面で非日常イベントとして考えると相応の価値はあると思いますが、それでも一般庶民や育児に追われている家庭では頻繁には鑑賞できない金額ではないでしょうか。
メモ
海外では映画館でのサブスクリプションが導入されている国もあります。1か月いくらで見放題というサービスです。
また曜日や時間帯で鑑賞料金の価格差を大きくしている国も多く、(物価の差はありますが)日本よりも相当格安で鑑賞できる国が多い様です。

やり方の是非は分かりませんが、日本の映画業界もそろそろ殿様商売からの脱却をはかるべきなのかもしれませんね。
新型コロナウイルス感染のリスクがない
自宅で動画配信サービスを鑑賞している限りにおいては、新型コロナウイルスの感染リスクはありませんが、映画館はそこそこリスクの高い施設とされています。
もちろんこれは一過性のものではありますが(と願います)、皆さんが映画館で映画を観る必要性を考えさせられるきっかけにはなり、動画配信サービスの良さを知るきっかけにもなったことでしょう。
映画館はオワコンなのか まとめ
映画館も動画配信サービスも良い所も悪い所もあるんです。
映像・音声のクオリティに拘るなら映画館に行こう
まだまだ映画館先行公開作品が多数
”非日常”を味わうなら映画館
利便性やお財布重視なら動画配信サービスに分がある

その贅沢さを知った上で動画配信サービスも上手に利用していい映画を沢山見てほしい。そんな気持ちです。